井上陽水

今日井上陽水の40th Special Thanks Tour 武道館公演に行きました。盛況で、追加公演にもかかわらず満席でした。客層はやはり高齢の四十代から五十代くらいの方が多いのですが、時には母親が娘をともなって、あるいは父親が息子を、といった光景もそこかしこに見られました。
 そうか、そういう時代になったのかと、感慨深いものがありました。

 フォークやロックミュージックはいずれ廃れると言われました。年をとればみんな演歌を聴くようになると、大人から真顔で言われ、馬鹿言っちゃいけないと内心思ったものです。
 それよりも、井上陽水って誰?ロックって何?という時代が来て、若者達は歳とった僕には想像もつかないような音楽を楽しんでいる、そんな未来の方がリアリティがありました。

 僕と親の世代との間には、そういう超えられない溝のようなものがあって、彼らには新しい音楽も、アートも、すべてが、とうてい理解しがたいものでした。

 今、子供達が興じる音楽やアニメやゲームに接しても、違和感がありません。こちらの感性もにぶっているのでしょうが、あまり面白いとは感じませんけれど、格別の驚きも、おそれも感じないのです。
 二十世紀少年ではありませんが、マークボランやデビッドボウイの登場に、世界が震えるような狂気じみたインパクトを感じたものでした。大人は若者の文化を、あきらかにおそれていました。

 かくして未来には、想像とは違って、親子で「傘がない」を聴くという、まことにのどかな光景が待っていたわけです。
 ちなみに同曲が収録された井上陽水初期の名盤のアルバムタイトルは「断絶」でした。

 親世代の僕としては内心ほっと胸をなでおろしているのですが、それは今の若者達にとって幸福な事なのかどうか、考えさせられる日でもありました。