カラヴァッジョ

 「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」を、レンタルビデオ屋で、手に取りました。無精者の僕は、たいていの映画を、自宅で観るのだけれど、もし上演していると知っていたら、映画館で観てもよかった。
 
 画家を題材にした映画は古いところでは「モンパルナスの灯」(モディリアーニ)「炎の人」(ゴッホ)最近では、フェルメール青いターバンの少女像を題材にした「真珠の耳飾りの少女」や「サバイビング ピカソ」というのもありました。あれは面白かったなあ、、。

 映画は、なかなかの出来でした。もっとも僕にとって映画を観る楽しみのひとつに、歴史的風俗や、衣装の再現というのがあって、いにしえの時代のファッションや町並みが出て来るだけで、すっかり満足してしまう傾向があるので、あまりアテにはなりません。

 カラヴァッジョの本名はミケランジェロ・メリージ。
 ミラノ近郊の石工の息子として生まれ、その後の多少の履歴はわかっているけれど、古典の画家達の例にもれず、詳細ははっきりしません。
 時間の彼方の海に浮かび上がるのは、彼が、傷害事件などを起こした時と、絵を描いた時だけで、後は、波間に深く沈んで見えません。
 
 カラヴァッジョは、チンピラでした。
 その生涯は彼の作品と同様に、激しいコントラストに縁取られています。
 記録では、三度警察のやっかいになっています。類い稀な才能に恵まれながら、粗暴で、無軌道な人生をおくった末に、乱闘の中で友人を刺し殺してしまいます。カードゲームの勝敗のもつれだと言われています。警察に追われ、逃亡生活の果て、持病のマラリアでその短い生涯を終えました。
 
 映画のストーリーが、どこまで史実に忠実か、不明です。
 幼なじみの侯爵夫人との恋と、彼女の庇護。
 石工の息子が侯爵夫人になる女性と幼なじみになるかな〜〜?という素朴な疑問が残ったりもしますが、フランスやイタリアで歴史的天才画家の生涯を、テキトーに描いたら、社会から大変な非難を浴びるので、おそらく概ね事実を描いているのでしょう。
 まあ、やぼなツッコミはヤメると、マラリアと自己嫌悪に苦しみながら、放蕩をやめられないカラヴァッジョの、壮絶な人生が、重厚に描かれた作品でした。
 全体にやや、饒舌な感じもしますが、カラヴァッジョの内面の苦悩に正面から迫ろうとする誠実な映画でした。
 
 
 カラヴァッジョは、映画のタイトル通り、光と影の画家です。人物に強いライトを当てて、深い陰影を作り出すという、手法のパイオニアです。今日では、写真の世界でありきたりの技法になってしまったので、その最初の衝撃を現代人が共感するのは難しいのですが、、、。
 歴史の扉を開けるには、その時代までの社会通念を理解する必要があります。

 彼の代表作のひとつ「聖マタイのお召し」。美しいコントラストは、登場人物をドラマティックに浮かび上がらせていますが、これは、たんなる技法上の革新ではなく、画家が光を主体的に操った歴史的瞬間でもあるのです、、、